日本語訳の怪

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2011/10/26 10:36 投稿先 97.サルでき本 原稿以前 投稿者 カワサキ タカシ

の本を手に取っている諸兄は、iPhoneアプリを作りたい、という目的を持って読み進めている方が多いかと思うのだが、そもそも、『アプリ』という言葉の意味をご存知だろうか。

よーしアプリを作ろう。はて、アプリって何だっけ。おもむろにインターネットの辞書サイトで検索すると、こんなことが書いてある。「アプリケーション」です、と。

最近の世の中ではすでにもうこの「アプリケーション」という言葉が市民権を得てしまっているので、「ああ、アプリケーションなのね」で探究を終わらせてしまってもそれほど困らない。いや、このくらいにしておくべきなのだ。うっかりその先に踏み込むと、そこにはブラックホールが口を開けて待っているかもしれない。

ワタシがIT産業に足を踏み入れたのは、インターネットとかウィンドウズとか、そういう言葉がテレビからも急に聞こえてくるようになった、ITバブル黎明期の頃だった。当時ワタシが所属していたのは、IT界の巨人(読売ではない)と呼ばれるような会社だったので、ニッポンを代表するような企業に対する、ビックリするような金額の案件がバンバン動いているのをよく耳にしていた。

スゲェ、オレもいつかはそんな仕事をしてみたい。カワサキ少年はそう思うわけである。ちょっと勉強しておこう。案件フォルダを覗かせてもらったりして。「XX銀行様 YY適用業務開発案件」。ほほう。スゴそうだ。なんのことだがサッパリわからないが。とりあえず飲み会の席で今日覚えたばかりの単語で自慢してみるのである、「適用業務開発案件がちょっとトラブってるみたいでさー、ヤバいんだよねー」と。ヤバいのはオマエだ。若さって怖ぇ。

実はこの「適用業務」という言葉が「アプリケーション」のことなのである。ほーら、知らない方が良かったでしょう?
適用業務。うん、まず日本語になってない。「何かに適用させるための業務(システム)のこと」なのだろうが、「何かに」に該当する部分が不自然な形で抜けてしまっているのだ。おまけに、元々アプリケーションの中に含まれていた、システム、つまり、コンピューターに該当するべき部分が、こちらは丸ごとスッポリ抜けてしまっているので、この単語だけだと意味がまったく伝わってこないのである。考えたヤツ誰だ。責任者出てこい。

「おい、山田(仮名))」「なんでしょう。山本部長(仮名)」「この『あぷりけーしょん』って単語、新しく我が社の辞書に追加するから、訳しておいてくれ」「『あぷりけーしょん』…ですか。どんな言葉なんです?」「いや、オレもよくわからないんだが、業務をどうとかこうとか…そんな感じだ」「サッパリわかりませんが」「頼んだぞ、山田」。山田君は、早々と帰ってしまった山本部長の席をぼんやり眺めながら考えるのだ。「アプライって『適用する』って意味だよな….で、なんで業務なんだ、いらなくないか、業務」。1時間、2時間。悩めども良いアイデアは出ず。山田君は結婚記念の腕時計を見ながら思うのだ。「そう言えば今日結婚記念日なんだよな…きっと怒ってるよな…トモコ」。そして3時間経過。山田君は諦めとも開き直りともつかない顔で対訳メモにサラサラと筆を走らせ、席を立った。『アプリケーション : 適用業務』、と。

恨むぞ、山本部長(仮名)。


※この記事は今度出す本の下書きの下書きです。
※全ボツになることもありますので、番外編としてお楽しみください。

【業務連絡】
さて、どうしたものか。

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